場所のチカラ

様々な場所や景観などについてとりとめなく綴ります。

大光寺 長崎市鍛冶屋町

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 樹木の形には、様々な剪定技術があります。近年は透かし剪定と呼ばれる技法でつくられる自然風剪定が人気ですが、それとは別に生垣に代表される人為的にある形に刈り込むジャンルがあります。海外では、トピアリーと呼ばれ、動物のかたちや幾何学型に剪定したりされます。このイヌマキの剪定もいわばトピアリーの一種です。大枝の所々に玉枝を残す「段づくり」、「玉つくり」と呼ばれる仕立てです。ひとつひとつの玉は底面を平らに、水平に作るのがポイントとなります。

 立派な民家でも見られる代表的な樹木で、今どきの新築では、手入れの関係で少なくなっています。そもそもなんで、このような樹形がうまれたのか?それを考えたとき、新芽が明るく出てくる季節の玉の浮遊感から、これは、もともと雲の表現として受け継がれてきた!と感じました。つまり建物、家の格式を上げるため、建物の周り、敷地外周に雲がまとわりついているイメージを狙っているのではないかと予想しています。変化の乏しい常緑樹ではありますが、黄みがかった新葉が吹き出す季節はこの木の最大の見どころだと思います。

 山採り樹形がもてはやされる昨今、そろそろ、このような段づくりも和風といったジャンルとは違う新しい解釈をくわえることで庭や広場に再登場してほしいものです。

参考:樹木の剪定と整姿 上原敬二著