場所のチカラ

様々な場所や景観などについてとりとめなく綴ります。

わらしべ長者のすすめ /「庭のかたちが生まれるとき」山内朋樹著

庭のかたちが生まれるとき


 お寺のほぼ新規工事(もともと庭があった場所ではあるが)となる庭づくりを着工から一応完工するまでのやり取りを描き、その流れについて考察を加えられていく。一応、外構、造園業を生業としてきたものとして、「そう、そうなんですよ。」と思うところも多いが、僕が面白いと思ったのは庭づくりの知恵のたとえとして「わらしべ長者」の話が出てきたところだ。

 わらしべ長者の話は一文無しの青侍が観音から授かった一本の藁しべの先に虻を結わくことから事が回り始まる。その事のはじまりには、藁しべ(物)と虻(物)を結びつけるという青侍のセンスが重要で、それが人と人を結びつけ、ついには大金持ちになる。本書では、この物と物の折衝、さらに人と物の一体化など、人が生活していく上での重要な課題が、造園工の作業を対比させて描かれている。

 物と物の場合には「偸む(ぬすむ)」というキーワードなど、人と物の関係には「遊ばせる」などの技法が説明され、これらの技術をうまくこなしていくことで、庭が完成し、結局、請負者と発注者がウィンウィンの関係が結ばれる。まさに、庭師だけのことではなく、生きていくうえで、日々の暮らしの中で意識的にするべき、とりあえず目の前にあるものに真剣に向かい合って、紡いでいくということが書かれている。このことが、表現としては人と人の折衝のあいだには、物と物の折衝があるという表現がされており、ああ、人と人の交渉は、人をいかに見ているかが大切と思っていたけど、なるほど、それだけではなくモノづくりが人をつなぐ鍵だなと思い知らされた。そういえば、「お金のむこうに人がいる」(田内学著)の場合は、人と人のあいだには物があって、提供する人がいることがとても大事なんですよ、と結局、やはりモノづくり(提供するもの)の重要性について説かれていた。

僕は現在、長崎傾斜地の空き地活用としてモデルガーデンの管理をしている。これも「藁しべに虻を結わえ」ていると思うので、前回(5月8日)、4月の管理作業としてブログを書いたが、慎重にいろいろな人と交換を重ねて育てていきたい。

できれば、プレイス・スケープ設計室のホームページhttps://www.placescape.jp/をのぞいていただけると嬉しいです。