場所のチカラ

様々な場所や景観などについてとりとめなく綴ります。

空き地を利用して新しい生態系をつくる「坂の町のくさはら」戦略

    

 先日、長崎市の令和6年度長崎伝習所「塾」選定から残念ながら不採用となったアイディアを仕切り直し、深化させたいと考え、ここにはじめて公表します。今回は提案内容とその目的について市への提出資料に加筆訂正し、コンパクトに活動できるような内容に変更したものを作成しました。

 長崎市内の斜面市街地における空き地が近隣に及ぼす景観、生活環境保全などの問題点を減らす手法として、家には土地がないがナチュラリスティックガーデンなど植栽管理をしたり自然に触れたりしたいと思っていらっしゃる方と一緒に、生態系保全の考えを取り入れた園芸的手法による植生管理のありかたを検討する「坂の町のくさはら」戦略を提案します。長崎市立地適正化計画※1に示された居住誘導区域でなおかつ、比較的空き地が密集している地域を対象とします。一方、自然共生区域とされているエリアについては、現地既存種、できれば在来種をメインとし、侵略的外来種を除く作業となるべきであると考えています。

 空き地はあくまでも私有地なのですが、所有者の協力のもと地域景観や環境の点から一時的、流動的ながら共有地として捉え直し、面積が狭いので一人でも始められる社会資本(グリーンインフラ2)として管理ができ、穏やかで美しい風景で、多様性がある状態を維持するために、園芸(ナチュラリスティックガーデン)という手段を使った植生管理をしたい仲間を増やしていく活動です。グリーンインフラを目指していますので、モザイク状に面的に展開することが重要と考えています。予算や管理手法、生態系保全についての評価方法など、それぞれが学び、試行錯誤することが求められます。

 このアクティビティは現在失われてきている地域共同体の代替となることを期待しています。今までの自治体中心の活動では、高齢化、人口減少などの問題を抱えているため、他の近隣地域に住み、植物が好きな方の能動的な活動により解決策を見出していきます。昨年度から私が管理をしている、空き地のガーデンを拠点とします。今後、支援、賛同者が見つかり次第、他の場所に増やしていきます。活動をすすめるにはみんな(公共)や地域の協力が絶対必要となりますが、活動の中心はあくまでも個人であり、カッコつきの「みんな」や「地域」ではありません。おそらく、この点が長崎伝習所「塾」選定時に行政機関には「公益性」や「貢献性」として認められない理由かと想像してします。しかし、公益性や貢献性は上から認められるものだけではなく、横のつながりから生まれるものもあるはずです。この活動を通してコミュニティのありかた、生き甲斐など社会関係問題にも取り組んでいくことを視野にしています。  

 当面、私のガーデン管理作業自体は、作業が増えたときはサポートしてほしいのですが、今のところ一人で大丈夫です。活動の推進方法はちょっと悩んでいます。仲間が増え次第、管理エリアを拡張し、勉強会、定例会など規模に応じて活動拡大したいと考えています。特に、植物の選択、植栽方法は新しい生態系を目指す場合、最も重要な部分となりますので、試行錯誤をメンバーで共有することが求められます。しばらくは活動を支持していただけるようSNSなどを活用していきます。植栽管理希望者は、敷地所有者と相談をしてお借りし、市民農園とは違い、植栽地の造成から植栽までグループのサポートがあるにしても基本個人が中心となって実施します。公益性はありますが、ある意味、プライベートガーデンなので造成整備の仕方も個人によって異なってきます。その後の維持管理は市民農園同様、管理者個人が植えたい植物を自費で購入し管理することになります。繰り返しになりますが、あくまでも個人が中心となる活動で、困ったときにお互いに助け合う活動です。個人の自発的能動的な活動を許すことなしに地域共同体の代替は生まれないと考えるからです。土地を持たないガーデナーだけでなく空き地が多い地域住民にとっても待望の手法だと思います。このような活動に賛同、参加していただける方、また関心がありましたら、メールをいただけると嬉しいです。 

(連絡先) nishizaka#placescape.jp   #を@にしてください。

※1 長崎市立地適正化計画

長崎市│長崎市立地適正化計画

※2 グリーンインフラ 

環境:【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか - 国土交通省